買ってください!でもお問い合せはしないでね Part2 〜 Web マーケティングよりマーケティング #33
かつて読んだ優れたマーケティングの本の中にこんな意味合いのことが書かれていました。
自分がアイスクリームが好きだからといって釣りに行く時、魚の餌にアイスクリームを持って行ったりはしないはずだ。
でもビジネスにおいてはこうした間違いが度々行われている。
釣りにおいては魚にあった餌を用意することが常識だ。
にもかかわらずビジネスにおいて、なぜ経営者はこんなにも自己中心的になるのだろうか。
あなたはあなたの利益に強く関心があるだろうが、顧客はあなたの利益に関心はない。
あなたがあなたの利益にしか関心がないように顧客もまた自身の利益にしか関心はない。
だからもしあなたがビジネスをしたいのであれば、あなたは彼らに対して関心を抱き、彼らが求めるものが何なのか追求するしかないのだ。
そして、僕はこんなふうに思います。
真に顧客が求めているもの、顧客の利益を知ることは、一般的に考えられているほど容易ではありません。
一部の経営者は、顧客の真の利益を知らないし知ろうとしません。
また、顧客自身、それに気づいていない場合だってあります。
そんな時には、顧客の感情の一歩も二歩も先回りして、こちらからそれを指し示す必要があります。
もう1度言います。
顧客の利益が何なのか、それを知るのは思っているほど容易ではありません。
こんな会社、世の中にはよくあります。
毎朝、みんなで理念や社是を唱和。
理念や社是は、 立派な額縁に入れられて壁に掲げられていたりもします。
ですが、これらが顧客に届いき、顧客がそれを実感することがなければ、それはただのお題目であり、上っ面の言葉に過ぎません。
顧客主義。
お客様第一。
これを社是とする企業は、日本に、136,904社以上あると思います(笑)。
ですが、これがきちんと顧客に届いていれば、日本の経済がここまで落ち込むことはなかったはず。
多くの企業が、顧客の利益のよりも前に、自社の利益、目の前のキャッシュを優先したからなのは自明です。
今年も残すところ1ヶ月を切りました。
実は、この12月の末で、小さな小さな一軒の焼き鳥屋が長い歴史に幕を下ろします。
食通、焼き鳥好きの間ではあまりにも有名な、渋谷のんべい横丁の『鳥重』。
一人で切り盛りしてきたお母さんの言葉がとても印象的です。
『お客さんのことだけ考えてれば不況なんて関係ない』
60年もの間、いつも行列を作り、行きたくても行けない店として、多くのお客さんに素晴らしいコストパフォーマンスの焼き鳥を提供し続け、多くの有名人が通い続けた小さな店の経営者の言葉です。
かのイチローですら、このお母さんの、
『プロであること』
へのこだわりに感銘を受けたとのこと。
口先だけの『顧客主義』が蔓延する今の日本には、こういう店こそ生き続けてほしいと思うところですが、既にご高齢とのことで、今月29日をもってこの名店は永遠に姿を消します。
(残念なことに、というかあたりまえですが閉店当日まで、既に予約は一杯のようです)
僕は、インターネットの商用利用が日本で開始された頃からこの業界に身を置き、多くのサイトを見続け、自らも構築してきながら、未だに憤りを感じ続けている1つの事実があります。
これこそ、毎朝みんなで理念を唱和しようが立派な額縁に入れて壁に掲げようが、結局のところ、こーゆー所に真の経営姿勢が現れる、と言う象徴的な事例かもしれません。
その『顧客主義』が口先だけのお題目で上っ面の言葉に過ぎないことを証明するような事例をご紹介します。
こういう企業は、
『うちの商品をぜひ買ってくださいね。でも、正直言うと、買ってくれた後のあなたには何の興味もないんです。』
と、堂々と宣言しているようなもんです。
たとえ、この経営者がそう思っているかどうかに関係なくです。
さて、みなさんにお聞きします。
ホームページという情報伝達媒体において、訪問者にとって最も面倒で迷惑なページってどのページでしょうか?
言い換えれば、そのページが嫌で、そのページの使い勝手が悪くて、そのホームページでそれ以上閲覧するのが嫌になって去ってしまうそんなページと言えばわかりやすかもしれません。
いかがですか?
そうです、そのページとは、あの忌まわしき入力フォームです。
前回のノートでもお伝えしましたが、この入力フォームこそが、ホームページ運用者の一番の悩みのタネなんです。
このページの多くは、
・お問い合せ
・資料請求
・商品の注文
という、ホームページ運用企業にとって、ホームページを通して利益を得るための入口だからです。
なのに、この入力フォームときたら、やたら面倒なページで、多くのサイトでは、このページを最後に訪問者が去っていく割合(離脱率といいます)が、どのページよりも高いんです。
だから、運用者たちは、このページを何とか使いやすく、敷居を低く、ストレスなく一連の入力を完了できるよう、工夫します。
その最たる工夫が、前回のノートでも書いた EFOです。
が、何度も言いますが、この EFO とて売り手の論理に過ぎません。
買ってもらう、資料請求してもらう、何とか利益の糸口を得たい、そのためなら何でもする、、
という論理です。
が、買い手の立場からすれば、この入力フォームは邪魔、迷惑、なければそれに越したことはない、そんなやっかいものでしかないんです。
みなさんもご経験があるかと思います。
このノートを読んでいただいているみなさんは、おそらくキーボードのタイプに慣れた方々ばかりだと思いますが、世の中の多くの人はみなさんほど PC にもキーボードにも慣れてはいないんだ、ということをイメージしながら読んでみてください。
入力フォームでは入力が済んで、次の確認画面に進んだところでエラーが出ることがよくあります。
再度入力し直してもまたエラーが出ることがあります。
これだけでも充分ムカつきますが、もっとムカつくのが、どこの入力が、どう間違っているのか、わからないことです。
また、わかっったとしても、何でそれが間違いなの? といいたくなることが多々あることです。
例えば、
【住所の番地は全角で】
こういうのムカつきませんか?
半角でも全角でも適切に処理できるよう、バックグラウンドで対応すればいいだけのことです。
こうして何度か入力ミスを指摘され、ようやく完了ページにたどり着いた時の、その人の(あ
るいはあなたの)感情をイメージしてみてください。
少なくとも、お問い合せ、資料請求など何らかのアクションを起こしたわけですから、その人あるいはあなたは、そのサイト(企業)に対し多大な興味を示していたはずです。
当初はです。
そして今、感情はどう変化しているでしょうか。
少なくとも、当初感じていた興味は、このめんどくさくて、ムカつく作業ですっかり冷え込んでいませんか?
Web の世界はいまだに気づいてない人が多いので、当社が掲げるメソッドが多くのクライアントに支持いただける理由にもなっているのですが、どうしてもテクノロジー、技術で問題を解決しようとします。
マーケティングに関してもそうなので、この業界がいかに頭が固く、遅れているかよくわかります。
だから、EFO なんてアホな仕掛けを盲信するんでしょうね。
まるで、
【サイトはこうでなければならない】
といった決まりごとがあるかのように、みなさんお考えなのでしょうか。
EFO はあったほうがいいかもしれませんが、できることはほんのわずかです。
EFO よりもはるかに利用者のストレスを軽減させる方法があります。
チームデルタは、このメソッドを駆使して大きな成果を上げています。
ちょいと他社が気づいていない戦略をベースにしたマーケティングと組み合わせることで、月200件ものオファーを得て、半年で業界 NO.1になったサイトもあるくらいです。
ものすごく簡単で、まったくコストのかからない方法なんですけど、売り手の論理に立ったまま、技術で解決しようとする Web 業界の方々には、おそらく100万年かけてもおわかりになることはないと自負しています(笑)。
頭を使って、技術を駆使して、より使い勝手がよく敷居の低い入力フォームにしようとするのはなぜでしょうか。
もちろん、何より【買ってほしい】からですよね。
【相談してほしい】【資料請求してほしい】すなわち、何とか商売になる糸口がほしいからに他なりません。
だから、ない知恵を絞って、何とか入力を完了させようと必死です。
(そんなことしなくても、もっといい方法があるんですか 笑)
みなさんにお伝えしたいことはここからです。
そんなにも必死になって買ってもらったにも関わらず、買ってもらった後、お金をいただいた後の態度が、びっくりするほど豹変するの、みなさんご存知でした?
必死になって、入力フォームという、【壁】を低くしようとしてた彼らが、今度は、【壁】を高く積みはじめるんです。
あたかも、もう来て欲しくないと言わんが如く。
こんな経験はありませんか?
パソコンやソフト、あるいは他の商品をネットで購入した後、何かのトラブルが生じたり、マニュアル通りにやってるつもりなのにうまく動作しない時、解決方法を知りたくて、購入したサイトを再び訪問。
そんな時のことを思い出してみてください。
「お問い合せ」や「サポート」のページを通して間もなく解決した経験、おありですか?
そして、もう1度思い出してみてください。
あなたは、どういう方法でその問題が解決されることを一番望みましたか?
多くの方々は、何度もクリックしてページを遷移することが必要だったのではないでしょうか。
さんざん、あちこちのページを見たあげく、最終的には、
・ FAQ(よくある質問)を読む
・入力フォームを使って質問を送る
・FAX で質問を送る
という方法を提示されませんでしたか?
チームデルタでは、アンケートをとったことがあります。
そうすると、最も多くの方が望む解決策は、
・電話で質問する
でした。
また、解決方法の選択肢に、
・【電話をする】がなかった
・そのことにとても気分を害した
と多くの方が答えています。
あなたも同じような経験がありませんか?
多くの方々は、抱えているトラブルをいち早く解決したいと思っていて、その最も望ましい方法が
【電話】
だと考えているんです。
アンケートの中には、
『結局、FAQ 以外、方法がなかった・・』
なんて解答もありました。
さんざん探した挙句、FAQ以外、サポートなしで問合せることさえできないサイト・・・
これは極端の例ではありますが、アンケートからはっきり感じ取れるのは、
【買ったことで何らかの問題を抱えた人の多くは不満を感じ、イラだっている】
【解決方法で最も望ましいのは電話】
の2点です。
そしてもう1つはっきりしたことは、
【買ってもらう時】の心遣いと
【買ってもらった後】の対応
には大きな差があるということです。
【買ってもらう時】と同じくらいの心遣いを【買った後】にも行なっている企業がどのくらいあるでしょうか。
購入者に上述のような不満やイラだちを感じさせている企業はまさに、
『うちの商品をぜひ買ってくださいね。
でも、正直言うと、買ってくれた後
のあなたには何の興味もないんです。』
と宣言しているようなものです。
事実、このノートを読んでいただいているみなさんの中にも問題が解決できず、こんなメーカーの製品、2度と買うか! と思った方がけっこういるんじゃないでしょうか?
そんなあなたが、もしも、別のサイトでお問い合せやサポートの電話番号が数秒以内に見つかり、電話をしたらすぐにオペレーターに繋がり間もなく問題が解決したらどう感じますか?
たぶん、多くの方々はこれまでに苦い経験を重ねているが故に感動してしまうんじゃないでしょうか。
その、あたかもきつねにつままれたような状況に、思わず『うそだろっ?!』って口にするかもしれません。
そのくらい、多くのお問い合せやサポートってお客様に激しいストレスを与えているということです。
僕も1年くらい前、こういうサポートを受けたことがあります。
これまでさんざん満たされなかったサポート故本当に感動しました。
大したことではありませんよ。
指定された URL にアクセスし、その場で問合せ番号に電話し、オペレーターさんが適切に教えてくれたのでその通りにやったら見事に解決した。
たったそれだけのことです。
でも、やはり感動しましたよ(笑)。
もうみなさんもお気づきですよね。
そして、この頭の固い、何でも技術で解決しようとする僕らの業界の人たちにも気づいてほしいところですが、ここにも大きなビジネスチャンスがあるということです。
僕のセミナー、講演に参加いただいた方々は既に
『あー、あれはそうだったのか!』
とお感じになったかもしれません。
そうです、この問題の解決を自社の最大のUSP(独自の売り)にして、
【◯◯◯◯の奇跡】
とか
【◯◯◯◯の伝説】
とまで言わしめた、あのネットショップです。
彼らは、こういう、上っ面で口先だけの顧客主義の正反対のやり方で、10年で10億ドルを売り上げるまでのネットショップに成長したんです。
僕は、前回のノートでもお伝えしたように入力フォームには全然、趣を置いてません。
でも、ものすごく反響のある問合せを作ることは誰よりも得意です。
そのための研究も重ねています。
そして、その集大成のようなサイトを今、構築中です。
1000点を超えるほどの製品を擁する、規模の大きなクライアントです。
が、製品ページはわずかです。
掲載している情報は必要最低限。
僕がここで本気で取り組んだのは、
【渾身の徹底サポート】
です。
もちろん、サイトだけでできることではありません。
その多くは、組織の改善とモチベーションに頼ることになりますが、クライアントとは、そういう面において、既に同士です。
まったく同じ方向を向くことができています。
そうすると、ものすごいサイトができるんですよ。
ここのターゲットは、エンジニアであり、設計者です。
クライアントはたくさんの意見をくれました。
ターゲットが何を求め、何を満たせば『ワォ!』が生まれるのか、彼らの要望のその一歩先は何か、それだけを考え続けました。
このサイトは、大きく分けて、技術者、設計者が求める情報に加え、あったらいいな、さすがにこんなのないよな、と思うような幅広い【情報】を網羅し、無料で、気軽に、そして素早く到達できる【仕組み】と結びつけ、そして、それでも、応えきれなかった場合の【最後の救済措置】の3つで出来上がっています。
【渾身の徹底サポート】を定義し、それを提供することで【快感】を得てもらい、その一歩先を提供することで【感動】にまで近づけたいと考え続けて、ようやく形になりました。
サイトと人が協力し合えば、ここまでのことができる、というベンチマークになると思っています。
これこそが、前回のノートでもお伝えした、製品のスペックやサービスの内容だけでは容易に差別化を図ることが困難な際に有効になる
【情報の差】
だと僕は考えます。
今一度、みなさんも考えてみてください。
【買ってもらう時】と同じくらいの心遣いを【買った後】にも行なう。
企業が顧客に対する姿勢として、こんなこと当たり前のことじゃないでしょうか。
おそらく、小学生だってわかることです。
それを、多くの経営者ができていないなんてとても恥ずかしいことです。
時代や景気のせいにする以前に、僕ら経営者は誠実に顧客に対応してきたか、正直に自らに問合せたほうがいいかもしれません。
自らの問合せにも答えることができない、あるいは面倒だと感じるような経営者には経営の資格はありません。
即刻、市場から退場すべきです。
顧客主義とは、理念や社是を唱和することではなく、立派に掲げた額縁の中にあるのでもなく、顧客に実益がある、顧客の利益を守り増やし、課題を解決し、痛みを和らげ、幸せにすることで、顧客から感謝されるような商品、サービスを提供することであり、サイトの中のお問い合せページを使いやすくすることも、購入後においても全力でサポートすることも、間違いなく顧客主義の実践の一つなんです。
昔、ある自治体から、
「お問い合せの電話番号は載せない」
と言われたことがあります。
ほんの少し前、ある上場企業からのRFP(提案依頼書)に、
「電話による問合せを激減させるために、サポートページを廃止し、FAQ のみ掲載する」
と書かれていました。
こんな、顧客に対する覚悟の欠片もない、腰が引けた経営者、あるいはマーケティング担当者には、本当に早期に引退いただきたいところです。
と僕が心配する前に、早晩、こういう企業は淘汰されるはずです。
なんたって、市場は常に正しい答えを出しますから。
そして、すべての市場を支配し、選別するのは、顧客なんですから。