口コミ(クチコミ)の力Part1
1.営利性を消す
ホームページ訪問者の心理Part2の最後で、ネットにおける最も効果的な認知・販促方法は「口コミ」です、とお伝えしました。
ホームページ訪問者の心理を知ろうとせずに、商品やサービスの認知・販促を行おうとすると大手企業ですら、大きな落とし穴が待ち受けていて、その結果として、大資本に裏づけされた既存のブランドバリューが、本来の力を発揮しないどころか、バリューの低下を招きかねないことを「いくつかの例」で示しました。
もしも、こちらを先に目にされた方は、是非、こちらも参考にしてみてください。
ネットにおいては、利用者各自にとって都合のよい価値が最も優先され、結果として価値は小さく細分化され、よりパーソナルになっていきます。
ネットの利用者は、自分の意思で、自分に興味のあるもの、おもしろいと思う場所にアクセスします。
ネットに繋がる時間とは、
自分の好きな場所で自由に振舞う状態
と言えるかも知れません。
ですから、趣味・嗜好を軸に形成されるネットコミュニティー(ネット利用者が集まるそれぞれの場所)においては、
営利性を強く感じさせる表現・内容
露骨な商売っ気
は嫌われ、反発を招いたりブランドに対するネガティブイメージを植えつけたりする可能性すらあります。
しかし、この利用者たちの心理をポジティブに捉えれば、”自分だけの価値観”に対しては、例えそれが、メジャーでなくても、既存のブランドバリューを持たなくても、支持される可能性が見えてきます。
これは、豊かな経営リソースをもたない企業にとっては大きな力になります。
2.口コミにお金はかからない
大資本の裏づけのないブランドが、テレビを始めとしたマスメディアにおいて登場する可能性は大変低いでしょう。
ですが、ネットにおいては、資本、ブランドの大きさに関わり無く、彼らの支持を得られれば瞬く間にネット上を駆け巡ります。
これが、ネットにおける最も効果的なマーケティング手法である「口コミ」です。
口コミには、それを発生させるベース/力になるものがあります。
何でしょう?
少しイメージしてみてください
それは、ファン心理です。
ネット利用における最も効果的な認知・販促方法である「口コミ」を誘発するためには
ファンを生む/醸成するプロセス作り
が必須です。
口コミを生じさせる一つの方法をホームページ訪問者の心理Part2でお伝えしました。
見たことも聞いたことも見たことも無いノーブランド、無印なブランドさえ、自らの嗜好に合いさえすれば、たやすく受け入れ、ファンにまでなってしまう、おしゃべりで、教えたがりでもある彼ら(そして、私たち)と世界一早い情報伝達速度を持つネットが協力しあって生み出された数々の新しい価値がネットにはたくさん存在します。
1つ例を示しましょう。
3.実は、みんな、たまごかけごはんが好き
2005年の私たちWebマーケティングに関わる者にとっての流行語大賞は、ダントツで「たまごかけごはん醤油:おたまはんR」でした。(笑)
なにせ、この商品、日本中に愛好者がいるにも関わらず、公けにするには、なんとなく気が引けて話題にしにくかった「卵かけごはん」を瞬く間に、公けのステージに引っ張り上げたんですから。(笑)
島根県の奥出雲にて、地元のJA、商工会、団体、村民の共同出資で運営される「株式会社吉田ふるさと村」(http://www.y-furusatomura.co.jp/)という第3セクター企業があります。
地元農家で栽培された野菜やお米を使った安全な食品を作るこの小さな会社から、誰に知られることもなく、ひっそりと開発されたのが「たまごかけご飯醤油:おたまはんR」でした。
既に多くの二番煎じ三番煎じ的商品も生まれるほどの人気商品で、一時は、品切れが続きプレミアまでついたことがあったほどです。
そして、この商品のうわさがネット市場を一気に駆け巡ることになった原動力の1つがブログです。
多くの個人ブロガー(ブログを作成している人)の書く文章の中に「おたまはん」が登場しました。
ブログには、書き手以外の多くの人がやってきます。
そこで知りえた情報を、今度は自分のブログに書き、それを見た人が、また・・・・
という連鎖を通してネット上を1つの話題が伝播していくわけです。
まさに、ネット上の口コミですね。
既にブームのピークを超えた本日(2006.08.30)でさえ、個人の所有するブログの文章に登場する関連ワードは、少なくとも以下の数字を示しています。
すなわち、口コミは今現在も消えていないということですね。
たまご(卵)かけごはん : 797件
おたまはん : 397件
多くのブログの中に、これだけの数の単語が登場し、これらを目にする(読む)人はその何倍もの数になります。
この数字が、口コミの出発点となってネット上を伝染(!)していくわけです。
ブログに限定しないで、Yahooで検索してみると、軽く80,000件を超えます。
口コミの力を感じていただけたでしょうか?
「株式会社吉田ふるさと村」は大変おもしろい試みをする会社として注目を集めていますがもともと決して大きな資本やブランドバリューを持つ会社ではありません。
ただ、地元で採れる産物を利用した製品の販売においてユニークなアイデアを持った小さな組織に過ぎませんでした。
しかし、時はネットの時代。
個人の価値観を最も大事にするネット利用者の多大な支持を取り付けるまでに要した時間は、ほんのわずかでした。
笑い話ではなく、おそらく、日本人の多くが、「たまごかけごはん」について語るには十分な話題を持っていたんだと思います。
ただ、先にも述べたように、言葉にするには、少々マイナー過ぎる話題であり、そのきっかけが見出されないまま個々の気持ちの中に堆積していたのでしょう。
そこに突然、これほどストレートな表現はないくらいの「たまごかけごはん醤油」の登場です。
これが引き金となり、多くの人たちの心の中で眠っていた「たまごかけごはん」に火がついたのです。
当時、ネットでは「たまごかけごはん」の話題は、それこそ百花繚乱の様相でした。
やっぱり、好きだったんですねみなさん、「たまごかけごはん」。
みんなが大好きなだけど、地味な存在だった「たまごかけごはん」を陽のあたる場所に担ぎ出した「おたまはん」。
それはそれはファン心理をくすぐる要素に満ち溢れた、素晴らしい商品開発だったと思います。
4.お金でファンは集まらない
その後も増え続けた多くのファンによって、「日本たまごかけごはん楽会」なる組織が生まれ2005年には、「第1回日本たまごかけごはんシンポジウム」なる大イベントが、地元吉田町で開催されました。
テレビを中心としたマスメディアがこれを大きく取り上げ(この逆転現象が最近多く見られます)たので目にされた方々も多いことかと思います。
一度吉田ふるさと村のホームページをのぞいてみてください。
http://www.y-furusatomura.co.jp/
http://www.owl-net.com/cgi-bin/main.cgi?func=getBoxPage&theBox=1175
決して華美ではありませんし、大きなコストもかけられていません。
が、ほのぼのとした、いい雰囲気が伝わってきます。
そして、一度獲得したファンとの間には、直接の利害を超えた、思わず応援したくなるような信頼感を媒体にした強い関係を築いているようです。
貴社にとって参考になることの1つや2つ、見つかるかもしれませんよ。
さて、次の章では、私が現在実行中のファンを獲得する別の方法について、みなさんにお伝えします。
ファンを生むプロセスは、決して1つではありません。
今、私は、私がこれまでにお伝えしたこととは逆の方法でもってそれ試そうとしています。
決して、貴社を惑わせる気はありませんが、
ファン心理を醸成させること=人の心理を深く知ろうとする試み
であり、ネットビジネスで成功を望むみなさん全てに、掘り下げて考えていただきたいと思うわけです。