世の中は Wow(ワォ!)にあふれている。 〜 Web マーケティングよりマーケティング #30
今年の夏は、多くのクライアントからオファーをいただき、休日返上で対応させていただきました。 今年も残すところ2ヶ月を切った今頃ではありますが、わずかながら自由な時間がとれたので、少々遅い夏休みをいただいて、ザ・リッツ・カールトン沖縄に滞在しています。 リッツ・カールトンといえば、すぐに、その社風やすべてのスタッフに与えられた高い決裁権、裁量権、また極めて卓越したホスピタリティーを思い出させますが、かつて、ザ・リッツ・カールトン東京の開業間のない頃、そのあまりにもひどいオペレーションとそれに不釣り合いな強気の価格帯を鑑み、リッツ・カールトンを名乗るのは100年早いと思ったのものです。 阪神ホテルシステムズが運営母体の、ザ・リッツカールトン大阪に対し、本家リッツカールトンによって所有・運営されるザ・リッツカールトン東京には、当時大きな期待が寄せられもしましたが僕が知る上質なホテル生活に慣れた多くの人の声も、概ね僕と同じ印象のようでした。 以来、ザ・リッツカールトン東京の利用は控えていましたが、今はどうなんでしょうね。 このノートを読んでいただいている方々の中で、最近、よく利用される方がおられましたら、ぜひ印象を教えてください。 さてさて、改めて、今こうしてこのノートを書いているザ・リッツ・カールトン沖縄。 既にチェックインしてから22時間経過し、さきほど朝食から部屋に帰ってきたろころです。 リッツ・カールトンがよくやることですが、このザ・リッツ・カールトン沖縄もその例にもれず、質の高い建築を再利用したホテルです。 この建築は非常に優れています。 誰の設計なんだろうと思わず興味を惹かれるくらい素晴らしい建築です。 ここはスーパーや建設を主な事業とする金秀グループがかつて「喜瀬別邸」として運営していたホテルをリッツ・カールトンが改装したもの。 エントランスで車を預けた後、部屋に案内されるまでのわずかな時間で、開業5ヶ月足らずのこのホテルが、既に非常に洗練され、かつ、誠実なオペレーションシステムを構築していることが見て取れました。 ちょっと無理を言って3時間早めてもらったチェックイン、2回の食事、各ファシリティースタッフの応対、ファシリティーの品質、ロケーションを含め、近々の再訪ありと決めました。 「究極の隠れ家」、あるいは世界最高峰のホテルブランドと世界の旅行者に言わしめたアマンリゾーツが運営する、スモールラグジュアリーホテルのように育ってくれる予感がします。 でも、この程度のことなら、わざわざ僕の休日の時間を割いてまでこのノートを書く理由にはなりません。 せっかくホテルでくつろぐわずかな時間を費やしてまで、またまた長々とノートを書いて、ぜひみなさんにもご紹介したいと思ったのには、当然ですが、この1年間、僕が多くの方々の前でお話してきた、卓越したマーケティングとWowな感動を再び、僕自身が体験したからです。 お客様のために、何をすべきか、何をしたらより快適な時間を過ごしていただけるか、常に高い意識をもって接している一人のスタッフに出会ったからなんです。 実は、今回、レンタカーを借りました。 車椅子の僕にとって、滞在先でレンタカーを確保するのはほぼ不可能。 (米国などでは、多くの街で、僕ら障害者が自ら運転できるレンタカーを借りられるんですけど) 北海道と沖縄には、ごくごく一部に取り扱っているレンタカー会社があるため、沖縄の足を確保するために借りたわけですが、これがびっくりするくらいひどいレンタカーだったんです。 外も中も汚れっぱなし。 カーナビは半分壊れている。 そして、究極の問題が、運転中の不具合。 またいつ同様の事態が起きるか、不安は解消されないままホテルに到着しました。 ここのホテルはバレーパークなので、玄関先で車を預けましたが、ホテルのスタッフが運転する際また不具合が起きてはと思い、事情を説明しておきました。 心地良いお出迎えの中、チェックインしたのは上述の通りです。 部屋に入って、数日分の荷解きを終え、一息ついた頃、部屋の電話が鳴りました。 Wow な出来事の始まりでした。 相手は玄関先で車を預けた若いスタッフでした。 彼はあの後、不具合を起こしている車を所有するレンタカー会社に連絡し、僕が借りた車で是々の不具合が生じたとの報告を受けたので少し試し運転をすることの了解を取り付け、ホテルの周りを運転し、不具合の再現を試みたとのこと。 同様の不具合は再現することがなかったので、レンタカー会社にその旨伝え、その上で僕に対し連絡をとり、僕らの安全を確保するために最良の措置を講じてほしい旨、伝えてくれたとのことを、後ほど僕あてに連絡してきたレンタカー会社の担当者から聞きました。 僕が出発前日からの徹夜の疲れで部屋で休んでいた頃、僕らを心配して一人の若いホテルスタッフが、これら一連のことを行なってくれていたんです。 おそらく、誰からの指示でもなく、彼自身の判断に基づいた行動だったはずです。 一人の迎えたばかりのゲストに対し、何ができるのか、何をすれば快適な時間を提供できるのか。 そして、どうすれば、ゲストの安全を確保できるのか。 自らが提供するサービスのクオリティを向上させるために、常に高い意識を維持しなければできなことだと思います。 目の前のキャッシュにばかり意識を奪われ、仕事への責任が抜け落ちた経営者や、口先だけの顧客第一主義、お題目と化した、理念、社是、流行りに影響されてきれいな言葉だけ並べたクレドなど世の中には、ニセモノが反乱しています。 でも、こうして、ホテル業務のほんの一部を支えるに過ぎない名もなきスタッフの責任ある心遣いと高いプロフェッショナルな意識を通して、顧客への貢献を学ぶ機会も、また同時に溢れているんですね。 ここでの時間はまだ始まったばかり。 これから彼へのお礼を兼ねて、ホテルの中を散策してこようと思っています。