ホームページ訪問者の心理Part2
1.ネットのビジネス利用は諸刃の剣
私たちは、日常において、常にいくつかの約束事や制約に囲まれ、人間関係に気を配ったり、利害関係を意識しながら社会との接点を持ち続けています。
口にしたくても、つい我慢をしいられる場面だって少なくありません。
しかし、そうした社会との接点から切り離された、1つの個人として接するネットにおいては、約束事やさまざまな制約から解放され、行動も発言も自由になり、個性的な振る舞いをするようになるというお話を前章ではしました。
巨大なコミュニティーでもあるネットをサービスの販促、認知に利用しようとする企業があってもあたりまえです。
ですが、ホームページ訪問者の心理を知ろうとせずに、商品やサービスの認知・販促を行おうとすると大手企業ですら、大きな落とし穴が待ち受けていて、その結果として、大資本に裏づけされた既存のブランドバリューが、ネットにおいては、本来の力を発揮しないどころか、ブランドバリューの低下を招きかねないことをいくつかの例で示しました。
ネット利用者の増大と社会への影響力を知ってビジネスチャンスを見出そうとする企業があまたある中、逆に、この一見特異そうなネット文化において、その利用を尻込みする企業すら出始めている状況において、実は、隠されたビジネスチャンスがあると前章最後にお伝えしました。
では、ホームページ訪問者の心理をポジティブに捉えて、
既存のバリューの低下を招かず
ネット利用者に反感を抱かせず
商品、サービスの認知、販促に役立てる
方法とは、具体的にどうすることなのでしょうか?
イメージしてみてください。
貴社のビジネスにおいてネットを利用するなら、どんな対策を講じ、いかなるプランを立てますか?
それとも、やはり、当面、ネットのビジネス利用は控える選択をされます?
ネット利用者は特別な人ではなく、あなたも私もネットを利用している時にはネット利用者です。
そんなにイメージしにくいことではありませんよ。
2.失敗の多くは、”閉ざされたコミュニティー!?”
前章で述べた通り、ネット利用者は、閉ざされたコミュニケーションをとても嫌がります。
同じく、商売っ気ぷんぷんな雰囲気や高圧的な発言も同様です。
NTTドコモの場合は、新サービスの認知促進に、多くの人が話し合える「場」としてmixiのコミュニティーを利用しましたが、結局は、
しゃべるのは、私たち(NTTドコモ)だけ
みなさんは、聞くだけ
という高圧的な態度が、利用者に大きな大きな反感を買い、あげくの果てには、
「別にキャンペーンではなく、プッシュトークについて話し合って理解を深める場を提供した」
などと詭弁ともとれる発言でこの企画を終了しています。
こんな一方通行のコミュニケーションでは、話し合いも、理解の促進もあったものではありません。
みなさんはいかがお感じになりますか?
では、どうでしょう?
もしも、情報を発信する側(多くの場合は企業)と発信された情報に対し発言する側(多くの場合は消費者)が、関係の上下や商売っ気を感じずに対等にコミュニケーションを図り、理解を深められたら、、、、そうです、まさにNTTドコモが望んだような状況が作り出せたら・・・
実はこれは案外、簡単なことなんです。
1つは、相手からのコミュニケーションを拒否することなく受け入れること。
多くの人から問い合わせや質問がきたらどうしよう? なんて考えるならネット利用は避けるべきです。
多くの人から、貴社の商品やサービスについて問い合わせがある、コミュニティーが盛り上がることは、もともと貴社が望んだことではないでしょうか?
口コミによって、人から人へと話が伝播し貴社の商品、サービスへの興味が高まれば高まるほど、そうなります。
それが嫌なら、ネットは利用すべきではありません。
当たり前ですよね?
でも、NTTドコモは、これを嫌がったわけです。(笑)
3.ネット利用者にとっての価値=バリューとは?
繰り返しますね。
ネットの利用者の心理は、より自由、より個性的、よりわがままです。
そして、彼らは(私たちは)、ネット利用以外の時間におけるほど、既存のブランドバリューをありがたく思いません。
ネットでは、価値が小さく細分化され、よりパーソナルになっていくようです。
もっとわかりやすく説明しましょう。
ネットに繋がる時間が最も特徴的なのは、
「自らの意思で」そこにいることです。
そもそも、ネットに繋がるには明確な理由があります。
また、これもネットの特徴ですが、どこのホームページにも、何らかの嗜好性があり、多くの利用者は、
自分が興味ある
おもしろい、楽しいと思う場所があり
よくそこにアクセスすること
が多いということです。
前述のNTTドコモの例だって、mixiという日本最大のコミュニティーサイトの中の、携帯電話を使ったサービスやコミュニケーションに興味のある人たちが集まる場所での事件でした。
もうお気づきですか?
ネットに繋がる時間とは、
それぞれの人が
それぞれに「自分の好きな場所」にいる時間
ということなんです。
だからこそ、趣味・嗜好を軸に形成されるネットコミュニティでは、営利性を強く感じさせる広告や巨大なバナーがコミュニティーに突然あらわれると、その露骨な商売っ気が利用者の反発を招き、ブランドに対するネガティブイメージが生じ、悪口雑言が巻き起こる危険性があるわけです。
そして、反面、ポジティブなイメージをもってもらうことができれば、極めて費用対効果の高い望外な結果を手にする可能性もあるということです。
こういう心理的背景においては、”自分だけにフィットする価値観”がより好まれるようになります。
マスを対象にした巨大ブランドよりも、自分にとって都合のいい価値のほうが優先されるようになるわけです。
4.ネットにおける最も効果的な認知・販促方法、それは・・・
昨今、これを裏付ける現象が、ネット上ではいくつも起きています。
例えば、「お取り寄せ」ブーム。
みなさんのご家庭でも、1度や2度、ご経験があるのでは?
これは、ネットの手軽さや便利さと、時間と距離の壁を取り払うネットの特徴が合わさって生じたサブカルチャといえるかも知れません。
TVを始めとするマスメディアからもたらされる情報ではなく、
(現在では、ネットで生じた現象をマスメディアが注目する例のほうが目立ちます)
「自分が見つけた」
「ネットの他の人からの口コミで知った」
「自分だけのお気に入り」を全国津々浦々より、ネットを使って簡単に取り寄せすることができて、いまや、特に女性の間では当たり前になっているようです。
楽天市場を見てみてください。
身近な店では手にしにくい商材をもつネットショップの一部が大変な勢いで業績を伸ばしています。
彼らは、決して高いコストの広告宣伝を行っていません。
そのほとんどが、ネットにおける口コミで人気を得ています。
そうです、口コミ。
前述のNTTドコモのコミュニティーも、結局、ネットで起きた口コミで潰れたわけです。
そして、ネット上に毎日のように現れる、小さな、パーソナルな価値=ブランドが、どういうプロセスを経てネット利用者の支持を集めたのか、イメージしてみてください。
ネットでは、
パーソナルな価値(商材)を
営利性をあまり表に出さない方法で、そのよさを伝え
利用者の声を受け入れるコミュニティを用意し
コミュニティの声に耳を傾け、提供者(企業)側も積極参加する
ことができれば、成功の可能性(口コミ)が生まれます。
これって、何か、既に、どこかで似たようなビジネスモデルや体験をしたことありませんか?
そうです、、、これこそが、ファンを生む、ファン心理を醸成するプロセスなのです。
ネットでは、必ずしも大きな投資による広告・宣伝が効果を発揮するとは限りません。
それは、前述のホームページ訪問者の心理が多大に影響しています。
テレビを始めとしたマスメディアが採用する手法は、多くの場合、ネットでは失敗します。
ネットビジネスがダイナミックで興味深いのは、小さな資本でも、そのやり方によっては大変な効果を期待できること。
ネットで最も効果を発揮する認知・販促の方法は、「口コミ」です。
これは、言い換えれば、「ファンをつくる」ということなんです。
既存の巨大ブランドも、大資本によるネームバリューも、ありがたがられるどころか、一歩間違えば大きな損失を負わせかねないネット利用者たちの心理は、反面、聞いたことも見たことも無いノーブランド、無印なブランドさえ、自らの嗜好に合いさえすれば、たやすく受け入れる懐の深さもあります。
これも、極めてパーソナルな心理状態にあるネット利用者の特徴です。
しかも、ネットの利用者は、案外、おしゃべりで、教えたがりの傾向があるようです。
2チャンネルやYahoo掲示板、あるいは、どこでも見かけるBBSが成り立つ理由がここにあります。
これが、まさに、「口コミ」を発生させるエネルギーとなるわけです。