彫刻家 尾崎 悟 #3
藝術の分野においても、学閥だの画廊だの、一人の作家がデビューする前には踏まなければいけないルールや構図が存在し、それらに迎合しない才能は自らを伝える道すら絶たれてしまう。
こんにちは。 チームデルタの谷口です。
こういう、つまらん業界の構造を飛び越えて、作り手が最も大切にしているもの、すなわち、彼らの『作品』や、『創作への信念』を多くの人に見て知っていただく機会を築くのにインターネットほど役に立つメディアはありません。
もちろん、ネット上にはネットに沿うマーケティングやプロモーションのしかたが存在しますが、彼らの才能を意地の悪いルールで阻むような力は、少なくともここには存在しません。
情報の伝達において、インターネットはいまだピュアです。
さて、このシリーズは今回で最後です。
尾崎悟も、人間臭い俗物ですから、ものを創ってお客様からお金をいただかなくてはなりません。
お客様から依頼を受けて、何やら考え、材料を調達し、いじくりまわします。
少し前、築100年以上の家屋の解体現場で宝物を見つけたらしく、その古材を使って水面を伝う波紋のようなテーブルを作りました。
テーブルに集う人たちに、波紋を通して何かを伝えたかったのでしょうか。
ある美術館のために、凹んだ目玉と凸んだ目玉がくっついた扉を創りました。
それぞれの目玉には、それぞれ逆の自分の姿が映し出されます。
入る人と出る人を監視するためかもしれません。
僕は、彼が創った文庫を持っています。
大切な文(ふみ)をここにしまえということかもしれません。
でも、何でもかんでもキーボード叩いちゃうんで、今の僕には大切な文がないんです。
バナナリパブリックというブランド向けにオリジナルプロダクトを設計、制作しています。
やる気のないナマケモノが椅子に変身したようでもあるし、女が妖艶に誘うようでもある、そんな椅子です。
そして、とんでもないランプを創りました。
炎と水が1つになり、水の中にまっすぐな炎が立ち上がります。
宇宙に伸びる彼と人の想像を模したステンレスが、宇宙から急降下し、無の点となって大地に突き刺さります。
たった1つだけ、人の手になるアートを自分の傍に置いてみてください。
作家の手のひらから生まれ、彼の心を宿した作品は、、新しい持ち主の時間の中に何を溶かしこんでゆくはずです。
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プリミティブに言えば、マーケティングとは記憶にとどめることへの努力。
目にする者、耳にする者のハートにシンプルに、そして深くある記号を記憶させるために心血を注ぐことです。
文字も絵も、そのために選ばれ、並べ替えられ、切り取られます。
「尾崎悟」のサイトでも、この「記憶へのマーキング」をこっそりとやってきました。
まだ、一部未完成のページもありますが、一人の作家の軌跡を綴ったシンプルなサイトを静かに公開しました。
彫刻家 尾崎悟公式Webサイトはこちらから。
尾崎悟サイト制作にあたり、アートディレクションを担当いただいたウジトモコさん、作品や尾崎自身の本質を見事に切り取った写真家のSHINOBUさん、服部一成氏、高岡陽氏、小林高氏、前田紀貞氏、そして今は亡き江里好継氏など尾崎悟の人間形成に多大な影響を与えた多くの方々に感謝します。
そして何より、こうして、このサイトを手がける機会を与えてくれた尾崎悟自身に心から感謝。
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