ホームページ訪問者の心理Part1
1.やっぱり、全部お返しします!?
ある同一人物のネットを利用している時間とそうでない時間とでは、昼と夜、表と裏ジキルとハイド氏、とまでは言いませんが、大きな違いがあります。
そのことを知らない人と知っている人とでは、ネットを利用してビジネスを行う、すなわち、新規顧客の獲得、売上げ向上を目指すことにおいて大きな差がでると考えています。
ネットを利用する人の心理を示すわかりやすい例を紹介しましょうか。
貴社自身にあてはめて考えていただくと、よりわかりやすいかもしれません。
ちょっとイメージしてみてください。
例えば、スーパーマーケットで、買い物かごに一杯食料品を入れてレジの前に並びました。
レジで金額が示されて、いざ支払いってときになって、突然、レジの女性の対し、「やっぱり、全部いりませんから、お返しします」って、あなたは言えますか?
私なら、とても恥ずかしくて言えません。。。
では、ネットではどうでしょう。
同じくあなたが、どこかのオンラインショップで買い物かごに商品を入れ、支払いの手続きをすることになったとしましょう。
ユーザーID,パスワード、あるいは、お名前、住所、電話番号、メールアドレス×2、、、etc
タイプするのもなかなか面倒なものですね。
あるいは、ちょうど見たいテレビ番組が始まったかもしれません。
または、お友達から電話が・・・
パソコンの前に戻ったあなたは、「もう、今日は遅いし、面倒だから、明日にするか・・・」
こうして、あなたが購入しようとしていた商品は、全てキャンセルされることになります。
実は、こうした、購入直前でやめる経験をもつネット利用者は7割を超えると言われています。
あなたも、そのうちの一人ではありませんか?(笑)
もう1つ例を。
高級ブティック、高級レストラン、高級○○○と言われるお店に興味を持つ人は大勢います。
でも、入店に二の足を踏む人が多くいるのも事実ではないでしょうか?
何を隠そう、私もそうです。
入れば、煩わしい店員さんや、店長さんがいて、買うつもりのないものまで買ってしまうかもしれない自分が情けなくて、つい入店をためらいがちになります。
でも、これらの店舗の多くは、まず間違いなくホームページを持っています。
もちろん、多くの場合、購入すら可能です。
さて、はたして、あなたは、そして私は、ホームページへの「入店」に二の足を踏むでしょうか?(笑)
これらは、一人の人の実店舗とネットでの振舞い(行動)をシンボリックに描いた例では決してありません。
ごく日常で見られるシーンです。
2.大手企業すら陥る落とし穴”
ネットに繋がる時間は、実は、その他の時間とは心理的に大きな違いがあります。
ネットを利用している時間は、他の時間と異なり、社会的な接続から解放されているんです。
社会的な接続とは、会社や学校、友人や、家族、その他、さまざまな関係と繋がりを維持している時間と言えるかもしれません。
別の言い方をすれば、それらとの関係を維持するために、いくつかの約束事や制約の中にいる、と言ってもいいかもしれません。
ネットに繋がっている時間は、多くの場合、これらの制約から解放されています。
さて、これだけ普及し、情報を得る媒体として今や最も重宝するネットですから、商品やサービスの販促、認知に利用しようとする企業があってもあたりまえ。
ですが、ホームページ訪問者の心理を知ることなしで行うと大きな落とし穴が待ち受けています。
最近実際におこった出来事を例にお話しましょう。
2006/7/21付けJ-CASTニュースから記事を引用します。
「NTTドコモは2006年6月12日深夜、大手SNSのミクシィ(mixi)で「プッシュトークです、どーぞっ!」というタイトルのコミュニティー(コミュ)を開設した。
新サービス「プッシュトーク」について理解してもらうのが目的だ。この「コミュ」は、ミクシィが広告プログラムとして提供している「公認コミュニティ」として開設された。
だが、わずか10日後の6月23日に、閉鎖に追い込まれてしまった。
mixiの利用者ならこの事件についてご存知かもしれませんね。
「コミュ」の紹介文には、こんなことが書かれていました。
「このコミュニティは“電話でもない、メールでもない、新しいコミュニケーション” プッシュトークの輪を広げたい!という気持ちからできたNTT DoCoMoのオフィシャルコミュニティです。(略)。o○☆*゚特別ゲストの参加もあるかも!? 。o○☆*゚」
このコミュでは、独自の利用規約が定められ、利用規約の他にも、スレッドを立てられるのは管理人だけ、、 加えて、「プッシュガール」と名乗る、管理人のプロフィールには「こちらのアカウントは管理用なのでマイミクの申請などにはお答えできかねます。ご了承下さい」と、コミュ利用者とのコミュニケーションを拒んでいるとも取れる記述もある。
これが、利用者の反感を招いたようだ。
記事にすれば、ただ、これだけのことなんですが、実はNTTドコモは、ここで大きな間違いを犯しています。
ホームページ訪問者の心理をちゃんと汲み取ることができていれば、この新しいサービスの認知促進に大きく貢献したかもしれなかったのに。
この「コミュ」には、こんな発言が繰り返されます。
「(管理人の発言)こちらのトピックへの書き込みはご遠慮頂いております」
「(利用者の発言)返事もらえませんか」
さらに、管理人の沈黙ぶりを非難する発言が続きます。
「さて、プッシュガールさん、コミュニケーションを創造する会社(NTTドコモ)が運営するコミュニティで、これだけ皆さんがあなたに声がけをしているのですから、そろそろ皆さんにコメントをしていっても良いのではないでしょうか?」
「コミュニティにおいてコミュニケーションを拒否する姿勢を管理人がかくのごとく見せつけていれば、当然『嫌われる』という結果を獲得できることは十分に理解しているはずなんですよね」
こんな非難が相次いだ末に、コミュ自体が閉鎖に追い込まれた、というのがことの顛末のようです。
この新サービスでは、ジャニーズの亀梨くんや赤西くんをテレビコマーシャルに起用しました。
テレビコマーシャルに見覚えのある人も多いのではないでしょうか?
でも、このコマーシャルを見て、多くの消費者の間でNTTドコモへの拒否感、反発が生まれたとは思えません。
みなさんも、そうでしょう?
3.制約から解放される時、人は・・・
ミクシィで非難文を書いた人たちは、おそらく、ごく普通の社会人や学生かと思われます。
特に過激な言動の多いタイプとは思われません。
ではなぜ、ここまで非難が?
それこそが、ホームページ訪問者の心理なのです。
テレビコマーシャルは一方通行の情報伝達手段です。
見る側は、それに対し何も言うことが許されていません。
でも、ネットは違います。
基本的に情報を発信する者と発信された情報に対し発言する者の立場は対等なのです。
ネットの利用者は多くの場合、
商売の気配ぷんぷんなもの。
高圧的なもの。
上下、主従関係を感じさせるもの
に対し拒否感を強く示します。
でも、これは、本来、誰もが持つ基本的な心理です。
たまたま、会社、学校、友人、その他諸々と人間関係、利害関係が生じる社会との接点を持つ時間には、口にしたくてもできない言葉がたくさんあります。
しかし、そうした接点が絶たれた、1つの個人として接するネットにおいては、心の制約、さまざまな足かせから解放され、そういった発言されなかった言葉たちが、簡単に公共の場に姿を現します。
NTTドコモでは、以下のようなコメントで、閉鎖にいたる経緯を説明しています。
「話題をプッシュトークに限定したことに対して、批判や揚げ足を取るような発言が相次ぎ、全てに対応することができなくなり、運営が難しくなった。このような状況では、全てのコミュ参加者に満足してもらうことができなくなったため、閉鎖に至った」
これは、明らかに認識不足です。
彼らの非難が相次いだ理由は、
しゃべるのは、私たち(NTTドコモ)だけ
みなさんは、聞くだけにしてください
という、情報提供者側の高圧的な態度が、利用者に大きな大きな反感を買ったのです。
ミクシィの会員数は既に500万人を超えました。(2006.7月末)
NTTドコモが企画した、この大きなネット上のコミュニティを利用した新サービスの販促企画は大失敗したといえます。
そして、それが、ホームページ訪問者の心理を読むことができなかったことに起因するのは間違いありません。
また、NTTドコモは、こんなコメントも残しています。
「別にキャンペーンではなく、プッシュトークについて話し合って理解を深める場を提供した」
と、販促活動ではないと主張しています。
しかし、どう釈明しても、このNTTドコモのやり方に反発した多くの利用者たちの気持ちを元に戻すことは、時既に遅し・・・・です。
実は、こうした失敗はNTTドコモの他にもあり、05年11月には、ソニーが開設したウォークマンのPRブログに「ヤラセ」があるとして閉鎖に追い込まれています。
4.既存のバリューが崩壊しかねない
ある大手メーカーの広報担当者はこんなことを語っているそうです。
「ブログが有効なことは分かっていて、いろいろ活用してみたいのですが、やっぱり『炎上』が怖いんですよね」
企業がブログやSNS(ミクシィのような)の広告利用に二の足を踏む日々が続くかもしれません。
大手企業ですら、既存のブランドバリューが容易には力を発揮しないどころか、ブランドバリューの低下を招きかねないこのネットの文化とも言える世界においては、企業がネット上のコミュニティを使って販促や認知を高めることは不可能なのでしょうか?
とんでもない、、、実は、ここに大きなビジネスチャンスがあるんです。
この続きは、次章、ホームページ訪問者の心理2でお話しましょう。
(記事の引用は、すべてJ-CASTニュースより)